アメリカでの整形外科手術患者の入院までと退院後の一例

2017.01.27

友人が整形外科手術を受けるというので、その流れがどういったものなのかインタビューしたことを紹介したい。

友人は膝の手術を行うために、整形外科医の診察を受けた。手術日が決定すると、手術までの2週間くらいの間に、集団で受ける手術に関する説明を受ける。1週間に数回、手術に関する説明会(手術前の準備から手術後の流れ)が院内で開かれているようで、患者が自分のスケジュールに合わせて、いつの説明会に出席するかを決めることができる。手術が決まると、一冊の冊子(手術に関すること、手術前に準備すること、手術後の予定などが書かれている)を渡され、患者自身で内容を確認し準備するようになっている。その中には、手術前までにどのようなことを行うのかが細かく書いてあり、内科疾患を持っている患者には、それらをコントロールしている内服薬などを手術前までにどのように服薬・中止していくかなども書かれている。術前の清潔管理についても患者自身に任されている。手術が合併症なく終われるか否かは、患者自身の手術前管理にもかかっているというのが、この流れから理解することができる。自己管理能力のある患者が治療を受ける場合は、治療の一旦を患者自身で担うこと(自己責任)を意味しているようにも考えられる。

手術前日には、病院の情報管理部門から電話連絡が入り、患者は一般状態(日本でいう入院時の初期情報収集を含む)について話をしていく。病院視点でいくと、この時点で入院時の初期情報収集という入力業務は終了している。その後に、麻酔科医から電話が入り、患者は麻酔科医と電話で手術麻酔のことについて話を聞くことになる。

手術までの説明などがスムーズにいくと、手術当日朝6時に入院(友人はこの日の2例目の手術、1例目の患者は朝5時入院だ)する。そこから、部屋に麻酔科医が来て挨拶され、手術直前準備が着々と行われる。手術が無事に終わり、入院期間は、通常1日間(1泊)である。友人は疼痛コントロールがうまくいかず、2日間にはなったが、2泊3日で退院となった。

保険の種類によって、手術後に自宅に理学療法士と看護師が訪問する回数などが決まるらしいが、友人の場合は1週間に2~3回、リハビリのために理学療法士の訪問を受け、創部の確認(時期が来れば抜糸)や状態確認のために看護師の訪問を受けていた。抜糸は看護師が行えるというのは日本と違う点かもしれない。アメリカでは基礎教育の中に抜糸の方法を学ぶカリキュラムになっていて、アメリカで使用されている看護教育用の教科書にも掲載されている。

このような医療の流れを間接的ではあるが経験すると、日本の医療システムとの違いや、日本人の医療の受け入れ状況の違い(入院前の準備、入院日数、退院後の自己管理)を感じることができる。

保険制度の違いや医療費の違いというのも、入院日数や自宅での自己管理に影響しているとも考えられるが、日本もそのうちこのような医療の流れになっていくのかもしれない。

何かを変えていくときにありがちなことだが、10あるうちの1つを変えれば、他の9つは変わっていくわけではない。1つを変えるためには、そこに関係している9つのうちのコアな部分を見つけて変えていかなくてはいけない。そうでなければ、9つは個人の努力でどうにかすることも意味していたりする。日本人は、丁寧で自己犠牲を払う文化であることは、ある意味すばらしいことでもあるが、ある意味それを長く続けることは難しいと気が付く必要がある。多くの人たちが長く働ける環境をつくること(日本人特有の丁寧さをわすれず)が必要だと思うのである。

 

東京ベイ浦安市川医療センター
集中ケア認定看護師/米国呼吸療法士

戎 初代