在籍した大学の3学科合同授業

2016.10.24

ボイシーで在籍した呼吸療法学科は、放射線学科と同じ建物の中にある。看護学科は別に大きな建物を持っていて、そこに学内診療所、シミュレーションセンターを持っている。これら、3学科は、合同授業を持っていて、呼吸療法学科と放射線学科は、看護学科と共に、看護学科が学ぶ基本的な患者ケアについて演習やシミュレーションを学習する機会(必須科目)が与えられている。私は日本の看護師免許を持っているため、この合同クラスを免除してもらうこともできたが、アメリカの基礎教育を肌で感じられる機会だ(臨床へ出るための英語コミュニケーションの練習)と考え、このクラスを受けることにした。

この演習とシミュレーションの方法は、自分が看護学生だったかれこれ20年前には無い教育方法だった。日本でも、現在は基礎教育の中にこれらの教育をいろんな形で取り入れている教育機関が増えてきているのは耳にする。私も、アメリカに来る前に、いくつかのシミュレーション形式で行われるセミナーなどに参加した経験はあったが、基礎教育でどのようなことが行われているかは無知だった。

この大学での演習とシミュレーションはすべて、3学科の学生が2名ずつ1グループに配置され、患者に行う援助(清拭から、ライン確保、ドレーンの管理方法、酸素療法、レントゲンの見方、縫合糸の抜糸など)を、3学科それぞれの特異性を生かして協働して受けるクラスになっている。お互いの強みや役割を、お互いで学習しあうという機会になっている。

シミュレーションは、シミュレーションセンターという病院から病棟の一区画を大学の中に移設したかのような、病院内そのまま(もちろん物品も)の設備の中で行われる。6部屋の患者床でそれぞれが個室(アメリカの病院で成人を管理する病棟のほとんどは完全個室である。もちろん、部屋にはトイレも洗面所も汚物処理用排水場所もあるICUといえど、完全に個室である)に、2部屋のデブリーフィングルーム、1つの操作室、救急カーとや薬剤用の棚・サプライ物品などが、整備されている。

教育の流れとしては、演習を行い、実技チェック、先週分の演習の内容がはいったシナリオでシミュレーションを行うという感じで、3時間程度の内容が行われている。この3学科合同の授業は、他職種とどのようにして協働するかということを、学生のときから意識せずに学んでいける機会であり、チーム医療を行っていく上では技術だけでなく考え方(どうやってお互いの専門性を生かすか)を学習できる機会でもあると感じた。実際、私もこのクラスを受けてみて、シミュレーション担当の教授はとても苦手だったが、内容自体は基礎教育になくてはならないものだと考えさせられた。

看護学科の学生と関わってわかったことがある。彼らの成績はオールA(アメリカの大学はアルファベットA-Fで得点が分かれていて、A+、A、A-と、ひとつの文字が3段階にわかれている。この看護学科の場合A-までは許される)でなくてはならない。GPAという成績の表し方があって、満点は4点で、看護学科は3.8点以上でなくては進級できないので、1科目でもB判定をもらってしまうと、この大学の看護学科から籍を抜かなくてはならないという、非常に厳しい環境だ。授業中、寝ている者なんてひとりもいないし、みんな必死で実にまじめである。

その彼らの卒後の目標を聞いてみたことがある。「NPやPAになりたいけど、私の成績じゃ難しいかんじなんだよ」、と不安がっている。こんなに頭が良く、他職種とも協働ができる人材でさえ、NPやPAの学校に進むのはハードルが高いという現実が、アメリカにはあるのだ。

 
東京ベイ浦安市川医療センター
集中ケア認定看護師/米国呼吸療法士

戎 初代