コラム
看護師の皆様に役立つ情報や知識を定期的に更新しています。
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RRT(Registered Respiratory Therapist)としてGeneral ICU で研修(in USA)したことと、日本の看護師特定行為研修について
2017.03.06General ICUでは、入室中や入室してくる患者の呼吸状態評価、気道クリアランス維持、SBTの評価、気道評価、人工呼吸器離脱と気管挿管チューブ抜管、動脈血血液ガス採血、酸素療法、吸入療法など、呼吸に関連した状態アセスメントから必要な治療・対処方法を担うことになる。
慣れてくれば動脈血液ガス採血(直接穿刺)はさほど緊張もしなくなったが、患者の状態評価、特にSBT、気管挿管チューブ抜管を判断するときにはかなり慎重になる。自分の評価が患者の今後の治療過程に大きく影響するという責任が、ICUで働くRRTにはかかっているからだ。ちなみに多職種カンファレンスに参加した時には、学生といえど自分の受け持ち患者の状態やその日の予定など質問をうければ、呼吸療法士としてアセスメントしたこととプランニングを言わなくてはならない。患者から人工呼吸器を外すこと、気管挿管チューブを抜くこと、これらは技術を覚えればできることで、特別難しいことだとは思っていない。毎回同じように準備し、患者に説明し、実施すればいいからだ(抜管することの手順を、患者や同席する看護師に英語で伝えなくてはならないのには苦労したが・・・)。しかし、評価すること、どのように観察・方針を考えることは、手技とは違う。やり方を覚えれば毎回同じように進められるというものではない。
私が、留学で一番重要視していたところは、手技という技術を修得したいためではなく、呼吸療法士としての思考過程を勉強することだ。動脈採血ができる、気管挿管チューブを抜管する、そのこと自体の手技は最重要ではなかった。なぜなら、私は日本に帰ると看護師以外のなにものでもないからだ。これらの行為ができるようになること自体は私にとって重要性は高くなく、それよりもむしろ、医学的知識を得た上でもう少し深くアセスメントすることや、患者をどのように観察し、患者にとっての最善の方針を導き出していくことが出来るようになる方が、専門職としての専門性の高さを感じていたからだ。もちろん、スムーズに手技を行えるようになることは、患者の安全や安楽につながるため、最低限の技術を維持しなくてはならないことは理解している。
アメリカには、様々な国家資格がある。その意味は、それぞれが法に守られ、その範疇で責任制をもって業務を行っている(行わなくてはならない)ということである。
日本で始まった看護師特定行為研修は、技術を修得する研修でもあるが、プログラムコースによってはより多くの医学知識を統合し診断・治療を導き出していくプログラムもある。これらのコースに参加しようと考えている方々が読者の中にいるとすれば、1つだけお伝えしたいことがある。どのような研修・学習過程を選ぶにしても、参加する前に自分の選んだプログラムがどのような事を目的にして研修プログラムを組んでいるか、そしてどのような役割を担う人たちを育てていくためのプログラムなのかということを、しっかり調べた上で自分がどのように学んでいくのかをイメージして参加することが必要かもしれない。
ちなみに、私が知っている看護師特定行為研修のプログラムは、基本的な学習の方法を教えるプログラムではない。自分でどのように学習していくか知っている人(自分から勉強できる人)でなければ、プログラムについていくのは難しいだろう。看護師特定行為研修後に、「私は看護師ではなくなってしまった」と言うことがなく、同じ現場に働く看護師達に必要とされる特定行為ができる看護師になれるように成長してもらえるコースであることを願っている。
本当の意味で、医学と看護の両方をバランスよく持った看護師であることを、胸を張って言葉にも行動にも表せるような人材が増えれば、医療現場はもっとよいものに変わっていくと思うのである。
東京ベイ浦安市川医療センター
集中ケア認定看護師/米国呼吸療法士
戎 初代